夫婦が別々に10日間暮らしたら

文:ものすごい愛
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自分で言うのもなんだが、わたしたちはかなり仲の良い夫婦だと思う。

結婚してもうすぐまる4年。付き合ってから数えるともう7年近く一緒にいるが、「結婚なんてするんじゃなかった」と後悔したことは、一度たりともない。

毎晩手をつないで眠るし、休みが合えばデートにだって行く。

未だに「いってきます」「いってらっしゃい」「ただいま」「おかえりなさい」のハグを欠かしたことはない。

夫のことが好きで好きで仕方がないし、この人と結婚してよかったと心から言える。

そして、夫もわたしのことが好きで好きで仕方がないのだろうということが、日々の暮らしの中でひしひしと感じられる。

たとえば、「今日はデートだ!」としっかりメイクをしておしゃれをしているとき。

「かわいい」だの「目がキラキラしてる」だの、夫からの称賛の声は鳴り止まない。

まるで自分が世界で一番かわいいかのような錯覚に陥るほど。

それだけではない。締め切りに追われてお風呂に入る余裕すらなく、目の下の隈をこさえてパンパンに浮腫んだ顔で一日中パソコンに向かう姿だろうが、白目を剥いてヨダレを垂らし、豪快なイビキをかいてまるで麻酔銃を撃たれた野生の肉食獣のような寝姿だろうが、夫は「ほんとうにかわいい、生きてるって感じがするねぇ」と本気で言ってくれるのだ。

ありのまま過ぎる自分を見せてもなお、心の底から慈しんでくれる人間との生活に幸せを感じないわけがない。

わたしの結婚生活は「愛されるよりも愛したいマジで」ではない、「愛されれば愛されるほど愛しちゃうマジで」だ。

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二人と一人の時間をゆるやかに行き来して得られた、安心感のある暮らし

ただ、こういうエピソードを外で話せば「さぞ常にベッタリの関係なんだろう」「依存心バチバチなんでしょ」などと誤解されることが多い。

決してそんなことはないと断言したい。これが案外、お互い自由にやっているのだ。

家の中ではそれぞれ別々に過ごす時間もあるし、たとえ休みが合ってもどちらかが「今日はこれをするから一人で過ごすね」と言えば「そうなんだ、オッケー」と素直に受け入れる。

コロナ禍の前は、夜一人で飲み歩く"おひとりさまプレイ"なるものを各々楽しんでもいた。

わたしはたまに「特に理由はないけれど、一人でホテルに泊まってくる」と言い残し、街中のビジネスホテルにこもってテレビを観ながらダラダラ酒を飲む遊びをやるが、それについて咎められたことは一度もない。

そしてお互い、相手が一人きりのときに何をして過ごしているかは知らない。興味もない。

別に、付き合い当初から取り決めをしていたわけではない。

根底には「穏やかに暮らしたい」「相手が幸せであってほしい」という共通の願いがある。

だから、相手から「こうしたい」と要望があれば、たとえそれが個人的なものであろうが夫婦関係に向けられたものであろうが、叶えることで楽しさや穏やかさが得られるとわかっているから、自ずと「いいと思うよ」に受け入れられるのである。

二人で過ごす時間も、それぞれ一人きりで過ごす時間も、どちらも同じくらい大切。

一人きりの時間があるからこそ毎日仲良く過ごせているし、二人で過ごす時間が楽しいからこそ一人きりで過ごすことに不安を感じない。

それぞれの時間をゆるやかに行ったり来たりするからこそ、結婚生活で安心感が得られているのだと思う。

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久しぶりに夫と別々に暮らしたら

先日、意図せず長期で家を空ける羽目になった。

緊急手術のため3泊4日の入院を余儀なくされ、退院後1週間は実家で療養することに。家を空ける期間は10日ほど。

もちろん夫は心配してくれたのだが、当の本人であるわたしは至って落ち着いていた。

日本の医療技術は日々進歩しているし、頑張るべきはわたしではなく執刀医である。

あとはわたしの回復力頼み。入院中も療養先の実家でも、上げ膳据え膳で過ごせるとなれば、むしろ気が楽だ。

どれほど心配しようが不安になろうが、状況もやることも変わらない。

冷静に業務連絡を済ませ、にやにやしながら「ねぇねぇ、わたしがいなくて寂しいか?」と聞いてみた。

夫は明後日の方向を見ながら「いや? 大丈夫だけど?」と答えたあと、同じようなにやにや顔で「それより君のほうがおれと離れて寂しいんじゃないの?」と仕返しをしてきたが、目が少しだけ泳いでいるのを見逃さなかった。

手術は無事に成功し、経過は良好。当初の予定通りに退院もできた。

実家での療養生活は、想像以上に暇である。

基本的に安静に過ごさなければならないが、切った腹が痛いこと以外はいつもと変わらず元気なのがまた厄介だ。

執筆の仕事は締め切りを延ばしてもらったため焦ってやる必要はないし、唯一の話し相手である両親は仕事で不在。

リハビリがてら散歩にでも行きたいところだが、平日の真っ昼間から明らかに働き盛りの年齢の大人が近所をヨタヨタ徘徊していては完全に不審者なので、それも躊躇われる。

だからすることといえば、テレビ番組をザッピングするか、チェックし過ぎて新規投稿がなくなったSNSを眺めながら、誰か更新しないかとスマホ画面を指でスクロールし続けるかしかない。

ただまあ、こんな生活もたまには悪くないと思えた。

仕事や家事から解放され、一日中寝転がっていることをむしろ推奨されているので、罪悪感も湧かないのだから。

実家に滞在している間、ほぼ毎晩夫と電話で話していた。

一人での生活ぶりを尋ねると、「最近仕事が忙しくてさ、毎日目まぐるしいよ」「今日は休みだから家の掃除をしてたよ」とそれなりにやっているようだ。

「わたしがいなくて寂しい?」と聞いてみると、「そりゃあ寂しくないわけじゃないけど、結構ちゃんとやってるからね」と案外サッパリしたものだった。

まあ、そんなものだろう。

夫にとっては、久しぶりの一人での生活。

わたしも無事に手術を終えて経過も良好だし、術後という大義名分を掲げて実家でぐうたら無益な時間を堪能している分、口では「寂しい」と言いつつもそこそこ羽を伸ばしているのかもしれない。

それでいい、なかなかない機会である。存分に一人暮らしを楽しんでくれ。そう心から思っていた。

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いったい、なぜ? 夫からの愛情が大爆発

1週間後、実家での療養生活を終えて自宅に戻った。

すっかり元気になったつもりだとはいえ手術をしたわけだから、すぐに元通りの生活というわけにはいかない。

そんな状態のわたしを夫は常々労わってくれて非常にありがたいのだが、それにしてもチヤホヤが過剰だ。

もともと「かわいい」だの「好き」だのと惜しげもなく言葉にする人ではあったが、これまでの比ではない。

外出先から帰ると、まずは熱烈な歓迎が始まる。

玄関まで飛んできて「おかえり! 帰ってきた瞬間からかわいいね!」と矢継ぎ早に言う姿は、まるで主人の帰りを今か今かと待ち構えていた大型犬のそれである。

ちぎれんばかりにぶんぶん振っているしっぽが見えなくもない。

仕事帰りにお土産を買ってくる頻度も増えた。

誕生日はとっくに終わり、結婚記念日もまだ先なので「これどうしたの?」と聞くと、「だって君がかわいいからよ......」とちょっといいお菓子を差し出してくる。

ぼーっとテレビを眺めているだけで頭を撫でられ、「君は頭のかたちまでかわいい」と頭蓋骨を褒めたあと、少し離れたところからわたしを見つめ「この距離からでも後頭部がかわいいことがわかる」と意味のわからないことを真剣に言う始末。

順調に回復してきたからと久しぶりに料理をしたときなんかは、夫は一口食べるやいなや箸を置いて立ち上がり、突然「君も一回立って!」と妙な要求をしてきた。

え? 今食べ始めたばかりなのに? 行儀悪いよ? と思いつつ、剣幕に押されてしぶしぶ立ち上がると強く抱きしめられたのち、拍手喝采を浴びせられた。

突然のスタンディングオベーションは、まるでアカデミー賞の最優秀主演女優賞を受賞したかのようなテンションである。

なんだ。どうしたんだ。戸惑いを隠せないほど、夫のわたしに対する愛情が爆発している。

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ときどき一人ずつになるのも、悪いことじゃない

先日、友人が営んでいる店に一人で食べに行った。

「入院したんだって? 大丈夫?」「ありがとう、もうすっかり元気だよ」なんてやりとりをしたあと、彼がこんなことを教えてくれた。

わたしがいない間、夫がひとりで食事をしに来ていたらしい。

その際、たまたま居合わせた別の友人が「どう? 奥さんいないから羽を伸ばしてるでしょ?」と夫に尋ねたそうだ。

彼らが「おれなら昼間から酒飲んでダラダラ過ごしちゃうなー」「暴飲暴食の限りを尽くすチャンスだよね」「一人暮らしって気楽でいいよなーたまにしたくなる」などと盛り上がる中、夫は「そんなことひとつもない、ただただいなくて寂しいだけだよ......」とぼそっと溢し、肩を落としてしょんぼりしながら蕎麦を啜っていたことを教えてくれた。

なるほど、そういうことね。

そりゃあ入院と手術となれば、誰がどう見ても大変なのはわたし自身だ。

夫も寂しいことに違いはないが、何よりも妻を心配し、労わり、自分はしっかりしていなければならないもんね。

だから、寂しいだのなんだのと自分の感情を出すことを憚られたのかもしれないなぁ。

まったく、かわいいやつめ。

思いがけずそれぞれ一人きりで過ごす羽目になったが、これはこれでやっぱり悪いことではないのかもしれない。

「いやぁ、相変わらず愛されまくってるね」と冷やかされたが、「まあね、めちゃくちゃ愛されてるよ」と自信満々に返してやった。

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